マグロ漁が盛んなトラーパニは、シチリア最西端の港町。訪れたのは8月、東京の夏とは一線を画す強烈な暑さに辟易する。海の向こうアフリカ大陸から熱風が運ばれてくるときいて、その段違いの暑さに合点がいく。
ここを脱出し、つぎはマルタ島!と勢い込んでいたが、空港行きバスが着いた先がもう一つの空港で。例えるなら羽田空港に行くはずが成田に行ってしまったようなもの。。
あらゆる交通手段を調べたが、打開策がみつからず、せめて有意義な過ごし方をと、想い出のチェファルーに電車で向かう。
前回訪れたときは、おばあちゃん本人の名前が店名になっているトラットリアで、素晴らしく味のバランスがよい前菜の盛り合わせを食べた。そして、トマトソースが砂糖で甘くなっているのに鷹の爪でヒリヒリという、甘辛スパゲッティに大きなインパクトをうけたのだった。
Wi-Fiのあるカフェに入り、ネットで店を探すも、閉店したのかみつからず、結局そこで適当なサンドイッチでお腹を満たし、お昼とした。
ニューシネマパラダイスで知られるチェファルーは宿が高く、結局バゲリアというきいたことのない街に移動する。これまた映画の舞台になった街ということであったが。
自分のうっかり加減でマルタ行きを逃し、昼は昼で想い出の味をふたたび味わえなかった、というツキのなさに、気分は落ちっぱなし。
せめて美味しい夕飯でもとネットで見つけたお店は、こんな田舎に?と驚くほどのモードな店構え。その名はi pupi。人形たち、という意味。アンティパストは海水のムースという前衛具合だ。
こんな店で、とがったイタリア料理を頼まずに、TEMPRAを頼むのが正解かどうかは悩ましかったが、この地で、どんな解釈がされているのかという好奇心に抗えなかった。
出てきたのは、えびと白身魚の天婦羅というか、フリット。しかも衣は生姜風味!外がカリッ、中が柔らかでとても美味、というメモがある。塩をつけて口に運びながら、幸せ感がどんどん満ちていったのを思い出す。
サラダとスプマンテも頼み、31ユーロ(2012年8月時点)。
日本の天婦羅とは全く別物だったけれどSUSHIのように、自由なアレンジで、楽しまれるのもいいもの。
日本人にはない発想だと驚いた生姜風味の衣は、逆輸入して一度つくってみたい。