このなんのへんてつもない箸で。
こんにゃくを迷いなくつまめる奇跡。
昨日大丸東京店の9Fに箸を買いにいったところ、「すごい箸」の看板をかかげた実演販売をやっていた。水の中に沈むこんにゃくは、ふつうの箸の間をするりと通り抜ける。すごい箸にもちかえると、あっさりとつかまった。
驚くとか、感動するとか、ではなくて、ただただ、ふつうの箸でないことを受け止めた。
ひとつひとつ手作りしている若狭塗の箸で、削りと塗りに秘密があると。先の方は角柱のようになっていて、よく見ると無数の細い線が横向きに刻み込まれている。また、箸先に何度も滑り止めになるような漆を塗っているとのこと。かといって、あからさまにざらついていないので、不快感がない。
静かな口調で丁寧に説明をしてくれる民芸調の格好をした女性の、すごい箸に対する信頼や愛情がゆるぎなく、あつくるしくないところにも惹かれて、買うことにした。
毎晩酔っぱらうまで晩酌をする父に、この能力の高い箸はうってつけだ。
価格帯は広くとも機能は一緒だときいたので、デザインは問わず、お手頃価格の1300円程度のものにきめた。
自分のものは、すごい箸ではなく、デザイン重視で、小枝を模したこちらのものをセレクト。
これまで、父と私の箸の色調が似ていたため、たまに片方取り違え事件が起き、やるせなさを感じてきた。その不安からも解放され、箸が変わった新鮮な気分を楽しんでいる。