ありふれた日曜に突然始まった冒険譚

日本 - エピソード

午前中は渋谷。ゴントラン シェリエで買ってきたパンで、家で簡単に昼食を済ませる。

クロワッサンはパリパリでバターの風味もよく美味しいが、デニッシュ生地のメロンパンは発想がいいわりに、上のクッキー生地が美味しくなくて残念。
f:id:arubekiaji:20150125182642j:plain
バナナとマカダミア、スパイスのカンパーニュは個性的。

散歩に出かける

両親が箱根に一泊旅行に出かけ、なんとなく淋しい気持ちになった犬のリクエストで散歩にいく。私はお出かけ着のまま、ブーツをスニーカーに履き替えて、外に出た。
だんだん犬の気分が上がってきたのが表情でわかる。人里離れた林までたどり着いた時、出来心で首輪からリードを離した。猟犬だけどいまはおじいさんだからすぐ帰ってくるだろうと思い。
しばらく草地をくんくん嗅ぎながら歩いている間はよかったけれど、竹林に入っていくときに嫌な予感がした。止めようとしたが、もうどんどん上がっていってしまった。
来い、とか、犬の名前、好きなおやつの名前を連呼するが、もう、猪突猛進状態で耳に入らないようだ。
20分くらい、呼びかけてもなんの返事もきこえず、焦りが強くなってきた頃、急に鳴き声がきこえてきた。
声の調子には多少悲愴感が漂よっている。来いといっても来ない。私は竹林の周りを行ったり来たりして、声をたよりに一番近そうなところに行くが、まるで出てくる気配がない。
これは、穴に落ちて身動きが取れないのか、獣の罠にひっかかったかなんて思うと、気ばかり焦る。

犬を探しに竹林に入る

埒があかない、もう竹林に入るしかないと覚悟を決める。見る限り、人が通るような道はまるでない。また整えられている様子もない。それでも行くしかないかと、コートを脱いで、そっと置く。暑かったし、コートを枝などで傷付けたくなかったから。
ニットとスカートだけど、仕方ない。せめてスニーカーで来ていてよかった。古い竹や、枯れ枝をひっぱりだして、入り口をつくる。パラパラと乾燥しきった葉が舞い終わるのを待ち、かなりの急斜面を、青竹を掴みながらのぼっていく。
中は見事なほどに人が1人通れるほどの空間もない。万一死体でも発見してしまったらどうしようかと思ったが、人が通った形跡がまるでみられない。
枯れ切った竹が無数に倒れている。黒く変色したものも混じる。青竹につかまりながら、それらを越えていくため踏み台にするが、やはりバリバリと音を立てて踏み抜いてしまう。手はしっかり使っていたから、落ちてもさほどのダメージはないが、エネルギーを使う。見渡す限りどこも同じような状況で、少しでも竹が密でないところをと思うが、コース取りが難しい。
気づけば、時折聞こえる鳴き声の方向が変わっている。どうやら無事のようだ。タヌキかなにかを追いかけているのだろうと少し安心する。
ようやく少し、倒れた竹が減ったなと思ったが、今度は、うるしのような低木が青竹の間に密集している。こういうとき、うるしくらい見分けられるようになっておけばよかったとおもう。えい、ままよ!後からかぶれようが、今は犬が大事、と構わず突き進む。
走っているのだろう。鳴き声はどんどん遠くなる。呼びかけても返事はなく、焦ってしまうが、足元に注意しながら、竹林をすすんでいく。

謎の生き物に遭遇!

明るい光が少し漏れることで予告されていたが、突然竹林が終わり、視界が開ける。その途端、何かが飛び跳ねた。なにこの生き物??カンガルー?!なわけないよなー。。後ろ足でピョン、ピョン、と跳ねる。目の位置は私の肩くらいか。体が大きい。立ち止まった後ろ姿のお尻の白いのが目立つ。
鹿に注意という看板が近くにあったことを思い出す。鹿はこんな跳び方をするのか?!大きな角がないから、鹿であればメス鹿だ。
あまり刺激すると攻撃されるかもしれないので目線を外した。
気になったのは、この生き物が含み笑いをしていたことだ。飛び跳ねながら、その後こちらを振り返ってからも可笑しそうな表情をしている。私の必死な表情が面白かったのか。

引き続き探す

鹿にはかなりびっくりしたが、うちの犬の気配で移動した可能性があるので、近くにいるのではないかと先を急ぐ。
その後ぱたりと鳴き声がやんだ。人里に出て、誰かに噛みついたら、つかまえられて保健所に連れて行かれたら、という心配があったが、一度家に帰ることにする。
リードを竹林の入り口にコートと共に置いてきてしまっていること、寒くなったこともあり、着替えたり、犬のおやつ、水など、おもいつく道具を車に積んで、現場に向かった。最後にみたところの近辺、リードを離したところなどまわるが何もみえないし、音も聞こえない。どこにいったのか?
犬の探し方をネットで検索すると、最後にみかけたあたりに飼い主の匂いが染み込んだものと水、おもちゃを置いておくと翌朝そこに犬が来る、とあった。
もしかしたら家に帰っているかもしれないと思って家に戻る。いなかったが、先ほど竹やぶを歩き回って汗をかいたときの肌着をもちだす。
その後も時折声をかけながらぐるぐる山の周りをまわるがダメ。
肌着をしかけるのは帰り際にやるとして、最初にリードを離したところで腰を据えて待つことにした。たまにエンジン音を出したり、声をかけながら待つ。本を読んでいると、ふらふらと犬が近づいて来た。

無事に帰宅

怒らずに、帰ってきたことを労い、水を与えるといくらでも飲む。目立った傷もなく、ほっとした。
旅行中の親に、犬のことを連絡したら、帰ってきてしまうかもしれないとおもったので、人知れず解決できたこともよかった。この間4時間。
読書をしながらまどろんでゆったり過ごすための午後が、自分の判断ミスで、心配で苦しい時間だった。
人の立ち入らない竹林を歩いたり、鹿を見たり、さらに青い鳥をみかけたりといった展開は、生活圏内にあって、日常からかけ離れた経験となった。
タイトルとURLをコピーしました