イギリスにやってきたのは人生が折り返すかという頃。
こちらに来てからも小学校の教師をしていたが、定年の67歳まで続ける気が全くしなかった。モンスターペアレントは多いわ、労働時間が長いわ、添削など持ち帰りの仕事はあるわで。考えたら気が遠くなった。
そこで思い切って、60歳を前にして今まで好きだったことを仕事にすることにした。料理の学校に通って、料理人になった。
イギリスには、中東などからやってきた難民がたくさんいる。そうした人たちが、料理人になるとするとき、英語で書かれたレシピが複雑すぎたりする。それを実際つくってみて、平易な言葉を使ったレシピに作りかえることが、シェフとしての仕事の一部だ。
実は4年ほど前まで、隣の家に住んでいた。庭の手入れをよく手伝っていたお隣さんが老人ホームに入ったのでその家を買い、大幅にリノベーション。イギリスの古い家によくあるじゅうたんを取っ払って、木目が際立つフローリングにした。
そんな彼女は数年前、日本を旅した。パートナーと一緒にバックパックで訪日外国人用のレイルパスを使って日本中をまわった。なぜバックパックだったかというと。日本では重いスーツケースを持ち上げて階段を上がらなければならないような場面でも、決して助けが得られないときいていたから。
エピソードのどれもが印象深い。