イギリスでは日本以上に経済問題の悪化が肌で感じられる。
2020年4~6月における日本のGDP(国内総生産)の伸び率は-28.1%だったが、ロックダウンしていたイギリスは-59.8%だった。
イギリスの失業率は4.1%(最新、5~7月の数字)ほどで、そこまでひどくないけれど、政府の手厚い雇用対策がなされているためである。これまで賃金の8割を政府が保証してきたが、それも来月以降は2割程度になる。
これまで話を聞いた人々の実例を紹介したい。
シェフ1
30代のホテル勤務のシェフ。ロックダウンが終了してからも、観光客は戻らず、仕事がないので自宅待機をしている。
政府の賃金8割保証があるので、給料はもらい続けているが、収入は8割に減っている。
それでも働かずに収入が得られるということで、最初の1か月はハッピーだったが、すぐに飽きた。ジムに毎日通っているが、夜は映画をテレビで鑑賞して寝る時間も起きる時間もバラバラで不規則な生活をしている。
友人たちと遊ぼうにも、みな節約、節約でたいした遊びができない。
9月に入って、会社から解雇の連絡がきた。正式な日程は10月中になる。政府の8割保証が10月末までではあるが、そこまで会社が支えきれないらしい。
既にいくつかのレストランに応募しているが、応募が殺到しているのであろう、まったく返事が来ない。
アパートも、空いた部屋を貸していたが、半年間だれも入らないといった状況。祖国の両親に仕送りしているし、イギリスの永住権を得るのに1300ポンド(およそ18万円)必要だし、経済的に本当に厳しい。
シェフ2&タクシードライバーのカップル
シェフの仕事が無くなったので自宅待機をしている。たまに、オンラインで料理を教える仕事が入るが、本当にたまにである。
政府からお金が入るけれど、とにかく極力使わないように、ほぼ自炊している。
タクシードライバーは、観光客が来ないので、本当に仕事がない。やはり自宅待機していることが多い。
夏の間はペンキ塗りなど家のメンテナンスをしていたけれど、今はすることがないので、基本的にテレビの前で1日を過ごしている。
2人は一緒にガーデニングの仕事もしていて、たまに依頼があって出かけていく。
そんな状況のため、これで再度ロックダウンになったら、いったいどうなってしまうんだという不安が強い。
演劇ライター
ロックダウン以降も劇場は閉じたままなので、仕事がなくなってしまった。
リモートワークでできることをしつつ、土日や夜はバーで働いて、収入を補っている。
航空会社勤務
コロナの影響で、観光が元通りになる見通しがまったく立っていない。9月には、すでに離職者が発表された。10月まで働けるということだったが、もはやその情熱も無くなってしまっていたので、すぐに離職することを決めた。
仕事のためにロンドンにいたわけで、それが無くなれば、ここにいる必要がまったくない。この家賃のバカ高いロンドンを離れる決意をした。
さまざまな場所を訪れながら、今後の新天地を探していくつもりだ。
俳優
テレビで活躍する俳優ではなく、社内研修などで、演じてみせることを仕事にしている。
当然ながら研修がないので仕事はない。たまに、リモートワークをすることがあるけれど、それも滅多にない。
時間を持て余している。公園で過ごすなどしている。
シェフでも、忙しくしている人はもちろんいる。それでも、やはりオフィス街では、リモートワークをする人が多いので、かなり人が減っているという。
レストランだけでなく、住宅街のサービス店舗はにぎわっているが、中心部ほど厳しい状況にある。